セレンディピティ「フェイク説」もう少し
セレンディピティの語源となった童話『セレンディップの三人の王子』。その舞台は、今まで言われてきたスリランカではなくササン朝ペルシャだった。というのが前回のお話。なぜなんでしょう。
ヒントはアラビアンナイト
ペルシャといえば今でいうイランです。スリランカとは宗教も違えば、交流もそれほど活発だったとは思えません。そこで思い出したのがアラビアンナイトです。話は思いっきりずれますが、原典には有名なあの話がないんです。アラジンと魔法のランプも、シンドバッドの冒険も、アリババと40人の盗賊、空飛ぶ絨毯だって。今あげたお話は全部、ヨーロッパで付け加えられたと思われるもの。そしてそして、アラビアンナイトがヨーロッパで知られるようになったのが1700年代。大ブームになったといわれいます。いつの時代、どの国の人だって。外国の話には、あこがれというかロマンを感じるものなんじゃないでしょうか。
やはり創作ではという疑問が
ペルシャとスリランカ。「まだ見たこともない遠い国でこんなことが…」と話のネタにはほどよい距離感です。それどころかセレンディピティを提唱したホレス・ウォルポールは18世紀の人。アラビアンナイト大流行とかぶってもおかしくない年代です。疑おうと思えば疑えますね、そこで原点となるお話の成立年代も調べてみました。しかし現時点ではデータが見当たりません。ただ、題材となったササン朝のバフラム5世関連のお話は、叙事詩や民間伝承として数百年後に記録されています。『セレンディップの三人の王子』もそんな寓話のひとつかもしれません。いえ、その次代のだれかの創作だったという可能性だって。
真実はわからないけどセレンディピティはいつもどこかで
ペニシリン、コカ・コーラ、電子レンジ、ポストイット、iPhone。どれもこれも予期せぬ偶然やチャンスを逃さない発想から生まれたセレンディピティの成果物。世界にはまだまだ僕たちをワクワク、ドキドキさせてくれるセレンディピティのシーズがあるに違いありません。