角打ち番外編
「あのころ恵比寿で」
CAさんご推薦のワインはいかがですか?
「スチュワーデスの店」たしかそんな名前だったはずです。そう聞いて、あなたいま想像したでしょ。これは♡や😍なサービスがメインのお店だなって。違います。
スチュワーデス(今でいうCAさんですね)OBの方が経営されているお店だったんです。とはいっても気取った感などとはまったくの無縁。ワインバーと角打ちが一緒になったようなそれでした。ホッピーに焼き鳥、煮込みもいいけど。こういうのもたまには、ですよね。
その店があったのは恵比寿公園のはす向かい
場所は恵比寿でしたね。でしたと何度も書いたようにいまはもうないみたいです。少なくともgoogle検索してもヒットはしません。
店名こそスチュワーデスの店でしたが、スチュワーデス(現CA)さんがお酒をサーブしてくれるわけではありません。カウンターの中にはバーテンさんが一人だけ。彼のこと僕たちはコンちゃんと呼んでいました。場の空気をじゃましない、それでいながらこちらの軽口をきっちりと打ち返してくれるナイスなヤツでした。
ワインといちじく、これがおいしい
ありますものは、というとですね。世界の空を渡り歩いた国際線CAさんチョイスの逸品ぞろい。貧乏舌の僕にはよくわからないけど世界各国のワインワインワイン。つまみはシンプルにチーズにサラミなどの洋風乾き物系。そうそう忘れてはいけないのがドライ白いちじく。これがね合うんですよワインに。
甘みとお酒のおいしい関係にめざめた
クシャッとしたライトな色合いの白いちじくと育ちの良さそうなワインの赤。この組み合わせ、見た目にもいい感じですよ。マリアージュというほど気取った感はありませんが、ワインの渋みや豊かな香りに濃縮されたいちじくの甘みが絶妙。白ワインにだってもちろん合います。それまでは酒のつまみにドライフルーツなんて?というイメージでした。
この白いちじくに出会ってからはコロッです。フルーツはおろか、いまやチョコレートにウィスキーが僕の定番です。
これはもう洋風の角打ちやぁ~って
小さくて、テーブルはワインの木箱を重ねたもの。なぜか壁がふわふわとしたクッションばりだったような。これならいつ殴り合いになって、壁にぶつけられても大丈夫かな?いやそれはないだろ。なんてバイオレンスな想像をしたものです。
椅子なんかはありません。当然の角打ち王道、スタンディングスタイルです。
スマホもないのにサブスクリプション
お会計も王道キャッシュオンデリバリーですね。お値段は忘れましたが、お得な10枚綴りのチケットもありました。えっ?チケットがわからない‥。そうですが、ええとですね。一回購入のサブスクだとでも思ってください。スマホのない時代ですから、読み取る代わりにチケットを必要枚数ちぎって渡す仕組みです。(これで伝わるかな)
気取らず、騒がず、流されず
お客さんの年齢層は20歳以上、男女様々。職業もサラリーマン、公務員、金融系、カタカナ系、士業あり。どちらさまも基本お一人、せいぜい2人組。はっきりしたお会計と、場所柄もあるのか、欧米系のお客さんもよく見かけました。夏はドアを開け放して、冬はコートを着込んだまま。ただただその時を楽しむ。こう書いてみると本当に洋風角打ちでしたよね。
「酒は学校だよ」 by 開高先生※
自分自身との対話だったり、たまたま隣り合った人との一期一会のお話だったり。「スチュワーデスの店」ではいくつものセレンディピタスな気づきがありました。媒介してくれたのはワイン、そしてスコッチ、ウォトカ、ジン、アメリカン、カクテル系もあったように記憶しています。
※サントリーの広告キャッチコピーです。開高健氏の言葉だと思ったのですが、もしかしたらコピーライターの佐々木克彦さんの作品かもです。開高先生になりきって書いたという説を聞いたことがあるような。
こんなお店ご存じありませんか?
ワインバーなんていうと、おしゃれな感じのお店が多いみたいです。そっちもいいけど、仕事帰りにや食事の前に、軽く、気軽にワインを楽しむそんなお店。いいですよね。これを読んでるあなた、もしご存知ならぜひ教えてください。コメントでもいただければうれしいな。